2016 | Single Video Installation | Single channel video ×1(21mins.44sec.)

制作: 2016
制作地: スリランカ

本作はスリランカの悪魔祓いに関する映像である。 スリランカの悪魔祓いは、国立大学でその教育が行われるほど大切にされてきた伝統芸術であり、民間療法である。 私はこの取材で、二回の流産を経験した女性に出会った。女性は繰り返す流産が悪魔のせいであると信じていたため、悪魔祓いを行うことを決断したという。一方で、その夫は悪魔の存在を信じていないと話した。映像には「病い ( 悪魔 )」との「対話と交渉」の物語が映し出される。この儀式の後、女性から、妊娠して三ヶ月になったよ、というメッセージが届いた。彼女は2023年の段階で二人の女児の母となっている。
本作はナレーションに全編を通して人工知能生成音声を使用している。それにより、生まれてこなかった子供、姿の見えない悪魔、いつか子宮に宿るかもしれない子供、そういったまだ現実世界には実在がない存在の浮遊感を捉えている。また、最後の場面では草津サイファー(滋賀県草津駅前でラップをする青少年たち)が悪魔祓いの祈祷とオーバーラップしていく。これは、悪魔祓いの儀式の中にある喜劇の演目の子守歌ともオーバーラップし、さまざまな
理由からこの世に実在しない存在の鎮魂のようにも歌い上げられ、子宮にこだまする。

予告編映像