2017 | Single Video Installation | Single channel video ×1 (23mins.2sec.)
制作: 2017
制作地: ミクロネシア連邦 ピンゲラップ島
イントロダクション
12人に1人が全色盲と言われるピンゲラップ島。
全色盲である島民のファインダーと詩をとおして、彼らの見ている島の景色、世界観をあぶり出すことを試みた作品。
全色盲の医学的な研究対象にはなってきた彼らだが、 彼らの文化が深く調査されたことはほぼなかった。オリバー・サックスは「色のない島」という著書で、彼らが正常の色覚の島民よりも夜に視力が優れるということを記述していた。彼らの島の伝統的な夜間のトビウオ漁 Kahlek において、全色盲者が正常な色覚の人々よりもアドバンテージを持っているのではないかと仮説を立て、旅に出ることにした。
映像中の白黒の映像は、全色盲の島民自身に撮影してもらったものである。また、朗読されている詩も全色盲の島民本人によって「kahlek」について書かれた詩であり、朗読も本人たちの肉声によるものである。
いくつかの詩を以下に抜粋しよう。
” カーレックの間、女には女の仕事がある。 カメリスを作るのだ。そして、夫がカーレックから帰ってくると、女は温かなコーヒーを淹れて夫を家に迎え入れる。そして、島の伝統のココナッツビネガーをこしらえて、つくっておいたカメリスと共に、夫が取ってきたトビウオを食べるのだ。ベッドに入る前の、遅い夕食。”
” 私はカーレックを見るのが好きではない。 カーレックは、私の目には眩しすぎて痛いくらいだから。そして、私はトーチから溢れる炎が 怖い。火傷するような気がするから。 弟が無事に漁から帰ってきて、火傷も怪我もないことがわかると、私は心から安堵する。”
” 私には、すべての魚が白く見えます。サメも、トビウオも、私には白く見えます。カーレックの前は食べ物を食べてはいけません。カーレックで唯一嫌なことは、 この伝統的な掟のために、カーレックの最中にお腹が空くことです。 カーレックで恐ろしいのはサメです。彼らは人を噛むこともあるからです。”
展示記録
「79億の他人ーこの星に住む、すべての「わたし」へ」
ボーダレスアートミュージアムNOMA・滋賀
展示記録撮影:有佐祐樹
展示記録撮影:有佐祐樹