2018-2019 | Video Installation | 2 channels video ×1(11min looped)+ Single channel video ×1 (2min looped) + Multiple photos + Documents + Book

制作: 2018-2019
制作地: 日本

児童おにぎり手元_2000
児童おにぎり食卓_2000
老婦人とおにぎり食べる少年_2000
老婦人と歯磨きタイム_2000
老婦人と児童養護施設広間_2000
老婦人と女の子_2000
老婦人と調理師さん_2000
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児童おにぎり手元_2000
児童おにぎり食卓_2000
老婦人とおにぎり食べる少年_2000
老婦人と歯磨きタイム_2000
老婦人と児童養護施設広間_2000
老婦人と女の子_2000
老婦人と調理師さん_2000
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予告編映像1

予告編映像2

<イントロダクション>
「おにぎり」とその歴史が貫通する、認知症と幻視、児童養護施設、原爆稲の物語。

遠い記憶の確かさと
近い記憶の不確かさ

時間の中から生まれた子
時の中を息づく子

生きたい そう思うとき
生きて そう思うとき
それはいつも わたしたちの手のなかに

映像の一つはレビー小体型認知症の老婦人を映し出す。この認知症も、ほかの認知症と同様に、古い記憶は覚えているが、近時記憶の保持が難しいという特徴がある。レビー小体型認知症をもっとも特徴づけるものが、「子供の幻視を見る」ということである。(ときに「自分の分身」をみる人もいる。)座敷童伝説というものが、かつてのレビー小体型認知症の人々の体験なのではないかという一説もあるくらいだ。この認知症の人にとり子供の幻視は、まさしくありありと眼前に存在するものであるといい、多くの人が、幻視の子供に「食事を与える」などの現実上の行動を見せる。ある人は、幻視の人物がお腹を空かさないように、「おにぎり」を作ってあげて置いておいた、という話を語った。日本人のソウルフードである「おにぎり」は昔から人の思いを乗せて誰かの手に渡されてきたものであるが、“現実と幻覚の境界すらも飛び越えて手渡される”ほど魔術的な存在であることを、このエピソードは強調する。

映像の老婦人も、家に遊びにくる子供に食事を与えたというエピソードを語る。しかし、その記憶はときに曖昧で、そのとき自分がどこにいたのか、なぜ子供たちがいるのか、「わからない」という。幻視の子供達のことを詳細に語ろうろするほど、老婦は混乱していく。しかし一方で、戦時中の遠い記憶はしっかりと覚えている。特攻隊の人に自分のマフラーを渡した話を、老婦人は鮮明に語り始めるのだった。

本展で参考書籍として展示した「The war and public health」という本の表紙には、原爆投下後に配給されたおにぎりを手に持つ子供の写真が掲げられている。そのおにぎりには、戦禍を必死で生きていた人々が、互いに渡し合った「生きて。生きろ。」という願いが込められているということを感じる。

老婦人の映像と対になる映像では、現代の児童養護施設の日常が映し出される。ここでも、職員の人や食堂の人が、子供たちにおにぎりを作る。そして、おにぎりは子供たちのために作られるだけではなく、ときに子供たちが自分で作るものでもある。そこに込められているものは、子供たちの健やかな成長への願いであると同時に、自立や独り立ちへの叱咤激励でもあるだろう。

老婦人の戦時中の記憶と原爆後に配給されたおにぎりの写真をトリガーに、取材は長崎の原爆で被爆した「原爆稲」の話への展開していく。原爆稲には一定の確率で不稔米が生じる。栃木県にすむ農家の上野長一氏は日本で数少ない、この原爆稲を継代栽培している人である。栽培を続ける行為には、「戦争の悲劇を絶対に忘れてはいけない」という願いがこもっていた。しかし一方で、福島第一原発の事故が起き、日本中が放射性物質に怯えたとき、上野氏は原爆稲が不稔米を生じるという事実を福島の人に伝えることが恐ろしかったと語った。
歴史の悲劇が、形を変えて現実となったとき、歴史を伝えるという、重要だと疑いようがない行為にさえ、残酷さと躊躇が生じるということを、原爆稲は教えてくれる。

本展覧会はこのほかに、北九州で生活保護を断たれて餓死した男性の「おにぎり食べたい」という日記や、日本最古のおにぎりの化石と呼ばれるものの写真、戦国時代の炭化米の写真や資料などの展示で構成されている。

「日本最古のおにぎり化石」と呼ばれる△(三角形)の炭化米が、かつては呪術的な意味を担った米塊であるという、歴史的・考古学的な解釈があるように、おにぎりの魔術性を通して、人間社会の重層的な重なりと交叉を捉えた作品である。

展示記録

「逡巡のための風景」

京都芸術センター

展示形態:映像インスタレーション< 映像 >2チャンネル ×1(11min)、シングルチャンネル ×1(2min)

< 写真・考古文献 > 炭化米塊 / 石川県埋蔵文化財センター・横浜市歴史博物館・京都市考古資料館 協力
< 参考・展示書籍 >” The war and public health”
< 日記 引用> 北九 州生活保護打ち切り餓死事件より